近年、特に音楽家の間で認知されてきている体のメソッド、アレクサンダーテクニーク。
ですが、アレクサンダーテクニークが一体何なのか?
どんな人に役立つのか?
ということはあまり知られていません。
今回は、アレクサンダーテクニークとはどんなものなのか?誰に?どのように役立つのか?についてお伝えします。
この記事を書いている土橋は、2012年からアレクサンダーテクニーク講師として教え始め、これまで1,000人以上の方にレッスンを行っています。
Contents
アレクサンダーテクニークとは?
アレクサンダーテクニークは一言でいうと、姿勢や体の使い方を学ぶメソッドです。
アレクサンダーテクニークの始まり
アレクサンダー・テクニークは、オーストラリアの俳優フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(1869年-1955年)が発見し方法論化したメソッドです。
アレクサンダー氏はオーストラリアで俳優としてキャリアをスタートさせました。
しかし、ある時舞台の上に立つと声が出なくなるという不調に襲われました。
医者に行っても、休みなさいと言われるばかりで、根本的な解決にはなりませんでした。
しばらく休んで声の状態が良くなっても、舞台に立つと再び声が出なくなるということを繰り返してしまうのです。
彼は自分自身でこの問題を解決することを決意し、鏡の前で自分の声の出し方を観察するようになりました。
長い時間をかけて注意深く観察した結果、彼は声を出すときの体の使い方のある癖に気づきました。
声を出そうと思った瞬間に、無意識に首を縮め声帯を圧迫していたのです。
逆に、首が楽で頭と脊椎(背骨)がバランスの良い状態であると、声も楽に出ることを発見しました。
この発見が契機となって、アレクサンダー氏はこのメソッドを体系化していきました。
アレクサンダーテクニークの広がり
始めはアレクサンダー氏自身の発声の不調を改善する方法として発見したものでした。
その後、この方法が発声だけでなくあらゆる身体動作の不調改善とパフォーマンスの向上に役立つものであることがわかってきました。
アレクサンダー氏は1904年以降、ロンドンで演技の為の身体調整法として教え始め、その後俳優以外の人にも教えるようになりました。
現在では演劇だけでなく、音楽やダンス、スポーツなどのパフォーマンス向上、痛みの改善やリハビリなど様々な分野でアレクサンダーテクニークが取り入れられています。
アレクサンダーテクニークはどんな人に役立つのか?
アレクサンダーテクニークは動作をする時の不必要な体の緊張の癖に気づき、その癖をやめていくメソッドです。
ですので、体を使うものであればどんな分野でも効果があると言えます。
アレクサンダーテクニークはどのような効果があるのか?どんな人に役立つのか?詳しく見ていきます。
アレクサンダーテクニークの効果
アレクサンダーテクニークには大きく分けると以下のような効果があります。
心身の不必要な緊張の解消
アレクサンダーテクニークでは無意識に行なっている心身の不必要な緊張を解消します。
体と心は分けられるものではなく、本来一体のものです。
体の緊張を止めていくことで心理的な緊張も手放していくことができるようになります。
痛みの改善
無意識に行っている不必要な緊張をやめることで、体の構造に沿った楽で自然な体の使い方ができるようになります。
結果として、無理な姿勢や体の使い方が原因で起こっていた体の痛みが改善します。
医学誌の世界的権威である英国の医学雑誌ブリティッシュメディカルジャーナルで、慢性的な腰痛をもつ被験者579名を5年間調査した研究でアレクサンダー・テクニークを使った群は86%という高い腰痛解消率が認められたという研究結果が取り上げられました。
その痛みなど身体的問題に対する高い効果から、イギリス・ドイツ・スイス・アメリカなど欧米諸国では医師の処方があれば保険の対象にもなっており、社会的にも信頼を得ています。
パフォーマンス向上
楽器演奏やダンス、スポーツなどのパフォーマンスがアップします。
(無意識に)体を余分に緊張させながら何かのパフォーマンスをすることは、ブレーキを踏みながらアクセルを同時に踏んでいるようなものです。
ブレーキを踏むことをやめることで、本来の能力が100%発揮できるようになります。
アレクサンダーテクニークが役立つ人
このような効果を踏まえた上で具体的には下記のような方に役立ちます。
- 音楽家やダンサーなどのアーティスト:体の不調の改善やパフォーマンスの向上
- アスリート:怪我の予防やパフォーマン向上
- 本番であがる、緊張しやすい方:あがりにつながる不必要な緊張の解消
- 介護職、治療家、セラピスト:施術姿勢の改善やセラピー効果の向上
- ヨガ、ピラティス、運動指導者:運動の質の向上と指導力アップ
アレクサンダーテクニークを学んだ著名人
多くの著名人がアレクサンダーテクニークを学び、ノーベル賞受賞者も注目しています。
俳優
アレクサンダー氏は、舞台俳優でした。
そのこともあり、演劇の世界でアレクサンダーテクニークは広く活用されています。
著名な俳優さんでは下記のような方がアレクサンダーテクニークを学ばれました。
- ロビン・ウィリアムズ(アカデミー助演男優賞受賞 俳優)
- キアヌ・リーブス
- ポール・ニューマン(アカデミー主演男優賞 受賞俳優)
- レオナルド・ディカプリオ
- ウィリアム・ハート(アカデミー主演男優賞)
まだまだ他にもたくさんいらっしゃいます。
スーパーマンを演じていた故クリストファー・リーブさんもアレクサンダーテクニークを学んでいました。
アレクサンダーテクニークを演技で活かしているのがとても良く分かるシーンがあります。
その映像がこちらです。
クラークケントの時の体を固めて縮めている時と、メガネを外して固めるのをやめて本来の姿になったときの差がとても分かりやすいです。^^
余分な緊張をやめて、あなた本来の楽で自然な体を取り戻す。
スーパーマンになるとまではいきませんが、アレクサンダーテクニークのレッスンってこんな感じです。
また、英国王立演劇アカデミーやロンドン音楽演劇学院、ワシントン大学ニューヨーク・アクターズ・スタジオなど欧米の一流演劇学校でアレクサンダーテクニークが必須の授業として採用されています。
音楽家、ミュージシャン
- ユーディ・メニューイン(ヴァイオリン奏者)
- ポール・マッカトニー(ミュージシャン)
- スティング (ミュージシャン)
- 鈴木重子 (日本ジャズヴォーカル大賞・新人賞 歌手)
ジャズボーカリストの鈴木重子さんは、アレクサンダーテクニーク教師でもあります。
僕と同じアレクサンダーテクニーク指導者コースで学ばれた先輩になります。
ぎっくり腰で声が出なくなったときにアレクサンダーテクニークと出会い、初めてレッスンを受けて以来、ぎっくり腰や腰痛に悩まされることがなくなったそうです。
- 松任谷由実(ミュージシャン)
ツイッターでアレクサンダーテクニークを学んでいたことに言及されています。
「いつもリラックスしてるように見えるけど、ライブ前やコンサートで緊張しますか?」というファンからの質問への返信です。
緊張というより、要らない力が入ってしまうので、去年はツアーに備えて約半年、 #アレクサンダー・テクニーク という、力を抜くメソッドを習いに行ってました。👍 https://t.co/LSoWGqvW8C
— 松任谷由実 Official (@yuming_official) April 6, 2017
また、ジュリアード音楽院、ギルドホール音楽院、バークリー音楽院、英国王立音楽院など多くの一流芸術大学でアレクサンダーテクニークが採用されています。
ノーベル賞受賞者
ノーベル賞受賞者もアレクサンダーテクニークを学び、その効果に注目しています。
- チャールズ・シェリントン(ノーベル医学賞受賞)
- ジョージ・E・コグヒル(ノーベル賞受賞 解剖学者 生理学者)
- ニコラス・ティンバーゲン(ノーベル医学生理学賞受賞 動物行動学者)
〜1973年 ニコラス・ティンハーゲン氏のノーベル医学生理学賞授賞のスピーチより〜
「私は、アレクサンダー・テクニークを、高度に洗練されたリハビリテーションの一つとして推薦する。
個人的な体験から、我々は、アレクサンダー氏や彼の支持者が主張していることを確認できる。
それは、体の筋肉組織に違うように機能することを教えることで、様々な精神的および肉体的な機能低下や病気を、時には驚くべき度合いで、軽減することが可能であるということである。
我々はすでに驚きをもって、高血圧、呼吸、眠りの深さ、全体的な機嫌のよさと意識の明晰さ、外的プレッシャーからの回復力、そして楽器を演奏するなどの洗練されたスキル、などの多様な分野において、驚異的な改善が起こっていることを知らされている。」
まとめ
- アレクサンダーテクニークは100年以上前に始まった身体の使い方のメソッドです。
- 動作をする時の不必要な体の緊張の癖に気づき、その癖をやめていくことで本来のパフォーマンスを引き出します。
- 音楽やダンス、スポーツ、運動指導など体を使うものならあらゆる分野で効果を発揮します。